日本の離婚率が増加の一途を辿る現在、離婚の理由も多様化しています。
近年では、妻によるDVやモラハラが深刻化し、夫から離婚を切り出すケースが多く存在します。
明らかに妻に問題行動がある場合は、婚姻生活を続けるのは不可能であることが客観的にも認められます。
しかし、価値観の相違・性格の不一致・セックスレス等が原因の場合、夫婦の問題を立証するのは容易なことではありません。
今回は、妻の拒否によってセックスレスに陥っている夫婦が離婚するケースについて考えます。
「セックスレスの原因」が妻にある場合の離婚の留意点
まずは妻からの拒否によって、セックスレス状態にあるケースを具体的に見てみます。
妻から明確な拒否がある場合、セックスレスの原因は当然ながら妻にあります。
但し、一言で「原因」といっても、その背景には様々なことが理由としてあることも考えられます。
■妻側に原因があるセックスレス(例)
- 特に理由はないが気が乗らない
- 鬱病・鬱的になっている等、精神状態が不健康である
- 何らかの病気を発症している
- 更年期または若年更年期である
- 出産により痛みを伴う等、何らかの支障が出た
正当な理由もないのにセックスレスになっているなら、法的にも離婚が認められることはあります。
しかしながら、上記で紹介した例では「特に理由はないが気が乗らない」以外のものは、全て正当な理由があって拒否しているということになります。
離婚協議(夫婦の話し合い)で合意が取れれば、どんな理由でも離婚は成立しますが、離婚裁判になったときは要注意です。
裁判という戦いが始まれば、妻は女性の体の変化で苦しんでいると主張してくる可能性があるからです。
セックスレスの「期間の定義」
一般的に、セックスレスという言葉を聞くと「性的関係がなく不満がある状態」という曖昧なイメージで捉える人が多いようです。
セックスレスとは、特別な理由がないのに、夫婦合意の性行為やセクシュアルコンタクトが1ヵ月以上ないことだと定義づけられています(日本性科学会)。
つまり、この1ヵ月を振り返って1度も性交渉がなかった夫婦は、セックスレスということになります。
これに対し、法律上では「1年以上セックスレスが続けば、夫婦関係の破綻の原因になり得る」と考えられています。
協議の時点で妻が離婚に応じれば離婚は成立しますが、調停や裁判では「期間」が問われます。
セックスレスで離婚訴訟を起こす条件
先にご紹介した通り、裁判で離婚をする場合は「セックスレスの期間」が一つの条件となります。
但し、裁判とは事実や証拠をいかに提示できるか否かで勝敗が分かれます。
離婚裁判に臨む際には、セックスレスの原因が妻にあるという明確な証拠を集めておくことが必要です。
しかしながら、セックスレスという問題は「証拠を掴むのが極めて難しい」案件でもあります。
たとえば夫がつけている日記があり、そこにセックスを拒否されたことがわかる内容が記載されていれば、一つの証拠となります。
また、セックスレスに陥る以前は、夫婦関係が良好だったとわかるものがあれば、それも証拠として提示します。
他には、妻が拒否していることがはっきりとわかる録音テープ等も有効です。
まとめ
- 近年、夫婦のセックスレス問題は増加している
- セックスレスによって夫婦関係が破綻していることを実証するのは難しい
- セックスレスの証拠を集めることは簡単ではない
- 法的には1年以上セックスレスが続いていれば離婚が認められることがある
セックスレスの証拠を集めるために妻の観察を続けていると、妻に不貞行為(浮気)が発覚することも稀にあります。
あるいは録音テープに、単に拒否するばかりでなく夫を罵倒するような言葉や暴言があれば、セックスレスだけでなくモラハラ問題として取り上げていく方法もあります。
離婚裁判は飽くまで妻との勝敗を決める場です。
相手を敗訴に追い込むためには、相手のマイナス点をできるだけ集め、裁判官をあなたの味方につけていくことが必要です。
証拠の集め方や様々な作戦を練るためにも、その道のプロである弁護士の力が有効であることは言うまでもありません。